武雄市図書館に関するひどい記事とか図書館法の話とか

もふもふあげさん 社会
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いろいろと物議を醸してる佐賀県武雄市の新図書館(通称 TSUTAYA 図書館)なのだけど、nikkei BPnet に先日掲載された『未知の本と出合う空間を提供する、新しい図書館』という記事が酷すぎて驚いた。

読んで驚きの流れ

昨今の図書館に関する2ページに渡る記事なのだけど、1ページ目が武雄市図書館の話。で、ここに関しては Twitter 上だけでもかなりの批難が集まってるのだけど、そりゃぁそうだ。事実誤認しまくってるのだから。記事で取り上げられている3つのポイントに関しての突っ込みがなされているので、それらを引用してみる。

開架式と閉架式の2つの蔵書方式のうち、大半を開架式とした。従来は17万冊のうち、開架式は10万冊だったが、改装後は20万冊を開架式の書棚に並べた。膨大な数の書籍を開架式にすることで、利用者が自由に本を取り出せるようになり、知らなかった本に気づき、出会える空間が生まれた。

未知の本と出合う空間を提供する、新しい図書館 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

上記はさらに付け加えると、利用者は自由に本を取り出すことなんてできません。いちばん高い場所は脚立を利用しないとダメで、それは図書館スタッフの方に頼まないといけません。

座席数の話に関して。

開架式の書棚の導入により、利用者の滞在時間は従来以上に長くなる。そこでゆっくりと本を楽しめるよう、スターバックス コーヒーのカフェ席を設けた。玄関右手にスターバックスのカウンターがあり、玄関脇にはテラス席がある。2階のキャットウォーク部分のアトリウム側にも閲覧席を設けるなど、館内の座席も従来の187席から279席へ増やした。

未知の本と出合う空間を提供する、新しい図書館 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

個人的にはこの部分が猛烈に詐欺だと思っているのだけど、総座席数が増えたのが事実とは云え、館内でお金を落とさないとダメなような誘導をされるのであれば、これはもしかして図書館法 17 条に反する可能性が出てきたりはしないのかなとかね(ちょっとこれは後述)。普通に図書館だと思って利用できる座席数は減ってるのだから、これもミスリード。

最後は Facebook でも突っ込みが入って訂正された箇所。

このほか、武雄市民から要望の高かった雑誌や映像などソフト面での充実も図っている。取り扱い数が107タイトルだった雑誌は600タイトル以上に拡大。VHSが中心だった映像作品2600枚を4万5000枚に、CDも1600枚から3万枚に増やした(ただし、このラインアップは主に有料レンタル)。

未知の本と出合う空間を提供する、新しい図書館 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

上記は最後の行のかっこ書きが追加されてるのだけど [01] 、これを追記したことにより、「武雄市図書館って有償であれこれ借りることができるんだ」と思わせるような間違った誘導文に成り下がった。追記してさらにひどくなるとかどういうことですか。有償なのは TSUTAYA 利用時ですよ、ただの。図書館関係ない。

というわけで結論としては、まともな修正できないなら、最初の1ページをまるまる削除して2ページ目だけをリライトしてくださいという感じです。というか、なんでまるまる嘘書けるんだろう。本当にちゃんと調べてから書いてくださいよ……情けない。

まったくだ。とりあえず、問題点がわからない人は『佐賀県武雄市の問題について:takeoproblem』でも読んでください。

知らなかったので図書館法なぞ調べたら

問題の記事のかっこ書きで『有償レンタル』という言葉が出たので、改めて調べた。関連語句で検索したら1番目にヒットするが埼玉県草加市のケース。有償貸し出しを行いたい草加市と文部科学省とのやり取りの経緯が面白い。詳細は『草加市 図書館図書の有料貸出』を読んでいただくとして、結論は以下。

図書館法第17 条に無料公開規定が置かれた趣旨は、図書館の目的が一般公衆の利用に供されることにあることから、公立図書館が真に住民全部のためのものであり、利用しようとする人に常に公開されるべき点にある。図書館の利用は住民にとって日常の生活や仕事に密着しており、有料化による利用者の負担は大きく、図書館の基本的サービスそのものの低下につながるものである。また、ユネスコ公共図書館宣言1994年」においても、「公共図書館は原則として無料とし、地方および国の行政機関が責任を持つものとする。」とされており、当方の知る限りにおいて、諸外国においても図書館の基本的なサービスである図書の貸出しを有償にすることにより、住民サービスの向上を図っている例はない。さらに、昨年の12月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定され、国および地方公共団体において、子どもの読書活動を推進するため、子どもを取り巻く大人を含めて読書活動を推進する環境の整備を求められているところである。サービスの向上等図書館利用促進のための整備については、図書の無料公開という基本的なサービスを維持しつつ、図書館の設置者が責任をもって行うべきであって、図書の有償貸出しにより行うべきではない。以上より、一部の図書の有料化であっても、これを行うべきではないと解する。

草加市 図書館図書の有料貸出

2011 年に行われたやり取りなのだけど、現在でもこれは有効でしょう。他にもいろいろと見つけたブログのエントリ等々を読んだのだけど、これに関してはいろいろと議論の余地はありそう。

図書館における有償化に関する問題というのは以前からあるということがわかったのは個人的に収穫だったのだけど、それにしても検索してすぐわかるようなことさえも調べないでアフォなかっこ書き入れてしまって勘違いさせるような記事を書くという、記者のレベルの低さに驚くわけです。

有償部分と無償部分の境界があいまいなように見える『図書館運営』とやらがどこまで機能するか、それは今後も経過観測が必要なのだとは思うのだけど、どうなることやら。ちなみに、自治体の財政を鑑みて「どこかでお金をいただけるようにしたい」という意識というのはわかるし、この点に関しては理解するのだけどね。

ただ、そこに関しては自治体が赤字になったとしても、守るべき『自治体による公の福祉における知の資産管理とは何か』という問題に行き着くわけで、商業主義に走り過ぎると何かが失われるであろう市政を望むのかどうかと。これもきっと議論があるのだろうけど、そこに住む方々が何を望むかという話にもなるのだろう。個人的には「武雄だけでやってくれ」なのだけど。

図書館における飲食の話

これはいろいろ調べていて見つけたおまけ的な話なのだけど、私はこれまで図書館での飲食の制限に関しての第一の理由が『書籍が汚れる』ことだとばかり思っていて、しかし実のところはそれだけじゃないということを知って目からウロコでした。

かたつむりは電子図書館の夢をみるかを見てから、書籍を汚さないことよりも、害虫を寄せ付けないことが主な理由に思えるようになった。借りた本を飲食物を摂取しながら(自宅で)読むことを禁止する「マナー(ルール)」が、図書館での飲食禁止ほど聞かないということから(と言うか今まで聞いたこと無い)、図書館だけ飲食を禁止するのは無意味ではないかと思っていたのだ。

(中略)

飲食禁止という「ルール」は、館内の清掃コストを利用者に少しずつ押し付けているという見方も出来そうだ。環境維持のための清掃・害虫駆除・殺菌消毒などは、サービス提供者側、即ち、図書館が担うものだと思う。

借りに予算がつけばやるだろうか。やらないと思う。利用者にある種の不便を強いているが、その不便が既に常識化し、変える必要も無いだろう。現状の図書館にとって、利用者の環境を良くし、利用者を増やすメリットあるだろうか。図書館が有償サービスであれば、メリットは明確だが(運営費用を得るという意味で)。

表面的な注意では気づかないこと – Ceekz Logs (Move to y.ceek.jp)

上記は 2007 年のエントリなのだけど、なるほどなと。「飲食できる開放的な図書館」を目指すというのも悪くはないのだろうけども、それにはコストが伴うというのが明白なわけで。持ち込みに関してそれなりに制限があるとは云え飲食ができるということは、害虫対策が必要でもあるということ。

そういうことを考えるに、「実は結構コスト掛かるんじゃないの、武雄市図書館って」ということも脳裏をよぎったりしますね。良い方向に取れば経費削減策はほどほどに、売り上げを計上することでそれをカバーするというチャレンジにも見えるのだけど、結局はコスト増で終わるような気がするわ。

TSUTAYA はともかく、スタバ利用者が減ったらどうするんだろう。まぁなんか、そんな感想。

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