佐賀県武雄市の図書館とTポイントカード導入の件

もふもふあげさん セキュリティ
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佐賀県武雄市と CCC が市の図書館における企画運営に関して基本合意を発表したのだけど、Twitter 上ではそれを批判する呟きが流れている。CCC というのは、TSUTAYA やTポイントカードで有名な企業なのだけど、カードを所持している方はそれなりにいると思う。その企業と地方自治体が提携した [01] のである。

具体的な話に関しては『高木浩光@自宅の日記 – 武雄市長、会見で怒り露に「なんでこれが個人情報なんだ!」と吐き捨て』や『武雄新図書館構想発表記者会見 #図書館 #takeolibrary – Togetter』を読んでいただきたいのだけど、ともかくは公の図書館における顧客管理を CCC に委ねるという話。そして問題は個人情報の取り扱い。

CCC におけるT会員の規約に関してはネット上で確認すると2点。『TSUTAYAフランチャイズチェーンレンタル利用規約』と『T会員規約』になるのだけど、前者は TSUTAYA を利用する際の規約なので今回参考になるのは後者。Tポイントカードは所持してるカード1枚で(提携している)諸々のサービスを利用できるのだけど、ネット会員にもなっているととんでもないことになる。

2. 当社が取得する会員の個人情報の項目
(1)「お客様登録申込書」の記載事項及びTログインIDお申し込み時の登録事項(変更のお申し出の内容を含みます)氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、電子メールアドレス等
(2) ポイントプログラム参加企業における利用の履歴
(中略)
(4)ポイントの付与又は使用等に関する情報
(5)クレジットカード番号
(中略)

3. 利用目的
(中略)
(3)会員のライフスタイル分析のため
(中略)
(5)会員の皆様からのお問い合わせ、苦情等に対し適切に対応するため
(6)その他上記各利用目的に準ずるか、これらに密接に関連する目的のため
なお、個人情報の利用にあたっては会員が退会後も上記 (5) 記載の利用目的のために利用できるものとします。

T会員規約|CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

Tポイントカードを所持していてネット会員になって連動していると、個人のあらゆる情報を取得されて紐付けられる。そして、退会後もその情報は保持されてしまう。これに図書館での利用履歴が追加され、CCC 側に保存される。Tポイントカードを利用した行動はすべて紐付けられて保存され、どこかで利用されることになる。

導入構想においてはTポイントカードが必須となるそうで、提示しないでも利用できるという選択肢はないらしい。これが何を意味するかというと、「この本を借りた人はコンビニであれこれを購入している」や「この本を借りた人はネットであれこれを購入している」「この本を借りた人はこういうビデオを借りている」という紐付けが行われてデータに残るということを意味します。規約により、仮に退会しても。

これはまだ誰も書いていないと思うけども、逆にすでにTポイントカードを所持している人が図書館を利用していない場合、その人の「あれやこれを購入している(借りている)人は図書館を利用しない」という情報もデータとして残ることになります。図書館でのTポイントカード提示が必須なら、そういうことになります。利用しないが故に、自動的に民間企業へそういう情報が蓄積されるわけです。

図書館の自由に関する宣言』という文書があります。

第3 図書館は利用者の秘密を守る

  1. 読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。
  2. 図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。
  3. 利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。

図書館の自由に関する宣言

私は知らなかったのだけど、このような発言も拾った。

図書館での利用履歴がどれほど大事なものなのか、武雄市市長はまったく理解できていないということがよくわかる。民間企業のノウハウを利用して業務委託して独自の仕組みを構築するというのであれば、多少は理解する。しかし、発表から考えるにそういうことはやらないようだ。民間——個人情報収集を売り上げに繋げている企業——と提携してその仕組みに乗るということであれば、話は違う。

武雄市だけの話であれば無視しても良い(ぶっちゃけ他人事で済ませます)が、このようなことが『先進的事例』として他の自治体に飛び火することを恐れます。地デジにおける B-CAS カードが登録しないでもよくなったのはなぜか、そういうことも考えてみないとダメなのではないか。読書というのは個人の信条、趣味嗜好や心情を如実に表す行動なのに、それが個人情報ではないと断言してしまう武雄市市長の放言には呆れるしかありません。ましてや民間企業に委ねることによって他所での行動まで紐付けられることになれば。

武雄市市長は『武雄市長物語 : 図書館貸出情報の扱い、ご安心ください!』にて「もうTwitterは議論する場じゃ無いよね。2ちゃんねる化してる。その点Facebookはやはりまともでしたね。やっぱり、実名が一番」とか書いておりますが、この件に関してはまた別の話として書いてみたい。プライバシーマークを取得していれば問題ないというのは、一昨年の Librahack 事件でも思い出してみると良い。それにしてもここ数年、図書館絡みで個人情報に関する問題が表沙汰になるのはなぜだろう。

私の住んでいる地区の自治体がこのようにならないよう、願うよ。

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