無料アプリの『利用』で表示される広告であるとか、無料で記事が『読める』ニュースサイト等にて表示される広告というのがあって、これは必要悪というか存在していても当たり前というか、これをわざわざ改めて議論することはないのだけど。
もちろんその広告の配信方法や挙動において、それが適切であるかどうかという議論は新しいもの(こと)がリリースされるたびに議論はされたりする。媒体側関係者なら普通やっているはず。事前に議論していなくても、持ち込まれてセールスされたら話を聞いた上で、それが適切かどうかのミーティングくらいはしているでしょう。そうして非採用になった広告配信手法は、これまでも掃いて捨てるほど存在している。
広告を出す側も「できるから何でもやってしまえ」という感覚ではない。
特にネット上における広告配信としてみれば。冒頭に書いた『』内の単語は重要で、無料だけど有益な何かを提供するための対価として設定されたものであり、『ユーザーから対象となるサービスへの能動的な利用』があって初めて発動する仕組みだったりするわけです [01] 。
さて、アプリをインストールすることでなぜかAndroid端末ロック解除画面に広告表示されるようになったらどうだろう。先に書いたことを鑑みて思考するに、このケースではまるで『スマートフォンを無償利用するために表示される広告』という印象を与えるようなことになってはしまわないか。
私の所持しているスマートフォンは自身でお金を出して購入し、月々いくらかの使用料を受けたサービスの代償として支払っているのだが、なぜ利用しようとする端末のロック解除を行うことで広告が表示されるのか。ロック解除ごとに表示されるということは、私などの場合、毎日どれだけの表示回数になるのか。
「ユーザーのアプリ利用頻度などに影響を受けることなく広告を訴求できる」という。
アプリを利用していなくても広告が出せるということは、それすなわち『広告配信専用アプリ』ということになってしまうのだが、それはアプリ提供者からすればどうなの。というか、長い目で見てもそのような仕組みを持ったアプリを利用し続けるなんてことはあり得ないと思うのだが。
しかも事前登録情報を元にターゲティング広告を表示できるという。
アプリのインストール時に、性別や年代などの情報を登録してもらいます。端末内のデータをクロールすることはありません。
想定した利用方法としては以下のようなことらしい。
現在考えているのは、(1)広告を閲覧するとポイントがたまり、各種ポイントやギフト券に還元できるもの、(2)学習アプリの1機能として、起動するたびに簡単な問題と回答が表示されるもの、(3)GPS機能を利用し、場所や時間に合わせて近隣店舗などの情報を配信するO2O(Online to Offline)サービスに近いもの――の3つです。
TポイントカードでおなじみCCCが、スクワットを始めたという想像に成功してしまいました。そうして1&3は余計なお世話。2は少し面白いと思ったけれど、それならそのような学習アプリとしてリリースすればヨロシイ。
「表示頻度の変更ができます」であるとか「表示方法を変更することもできます」であるとか、後からのインタビュー記事を読むと書いてあるが、それなら最初から止めれば良いと思います。そこまでして表示させたいような広告ってあるのかな。ぶっちゃけこれ、私の関わっている某社なら一刀両断で却下ですよ。わざわざユーザの反感喰らうような広告配信手法なんて採用しませんよ。
こんなの喜んで使いそうなのは、何も考えてない情弱広告主系とスクワットしてるところくらいじゃないの。
マルウェア疑惑に対してはこれだ。
抵触していないと理解していますが、明文化されていない部分、解釈による部分もあるので今後どうなるかは分からないというのが正直なところです。
アプリ開発側が引用にあるようなことを言い出したときは、ろくでもないことが多いというのが経験則としてありますね。こういうときは、実は議論がまったく足りていないことが多いような認識。そもそも、規則に抵触しないから何をやっても良いというわけじゃないのよ。
ユーザの許諾を取れば良いということも言っているようだけど、該当アプリ初回インストール時に誰でもわかるような確認画面を出して、かつ、デフォルトはアプリ内表示広告であることを約束できるなら足の小指の爪の先くらいは認めても良い。
ただそうなると、ロック解除画面広告を選択する人は想定を大幅に下回るくらいの数になりそうだけども、実際どれくらいの閲覧者数を想定してみたのかが気になるところではある。
そういえばTwitterにて指摘があったけれども、ロックされた状態からの緊急通報時の挙動が心配されていたようで。これは本当にそうで、もし広告画面を表示してからでないと緊急通報できないなら、これはもう企画の段階で終了のお知らせ。仮に表示をスキップできたとしてもワンアクション挿入される段階でアウト。
ちなみに。スマートフォン用のGoogle Adsenceなのだけど、誤タップを防止するため、少し触れたくらいならジャンプしないように修正されているということをご存知の方はどれくらいいるだろう。画面を指でスクロールさせるとき、広告上を指が通過する程度なら反応しないようになっているのだ [02] 。
結局、広告主側も『弊社に興味のある有効なタップ(クリック)』を期待しているわけで、興味ない人の間違った挙動からの訪問は意味ないのよね。いろいろ言われる業界だけど、考えている方々もたくさんいるのであった。
最近思うのだけど、そろそろAndroid環境の全広告スペース化とか考えるのは止めたらどうか。隙間があったら広告を出そうとするのは業界の悪いクセだよ。素直に広告も見てもらうことのできるコンテンツ製作という方面に力を注いだ方がみんなハッピーだと思うのだがね [03] [04] 。