2015/10/05にTBSで放送された『NEWS23』にて、“ツタヤ図書館問題”が取り上げられたので、それの文字起こしを行いました。番組を観ることができなかった方の参考になりましたら幸いです。
文字起こし全文
膳場貴子(メインキャスター):街の図書館が今、変わりつつあります。カフェが併設され年中無休になるなど、全国で進む民営化の流れに、賛否両論の声が上がっています。その代表が、レンタル大手のTSUTAYAと連携した、いわゆる「ツタヤ図書館」ですが、計画をめぐって愛知県小牧市では、住民投票にまで発展しました。
――愛知県小牧市――
テロップ:『「ツタヤ図書館」建設計画 住民投票は反対多数』
ナレーション:新たな図書館建設で、街が揺れている。愛知県小牧市は、3年後の開設を目指し、42億円掛け図書館を新築する計画を立てた。最大のウリは、TSUTAYAとの連携。管理運営を委託することになるが……。小牧市住民(男性):どういうような形で、自治体が民営化によって利益を生むのかと。
ナレーション:巨額の民営化図書館に、疑問の声が相次ぎ、住民投票にまで発展。昨日投開票が行われ、結果、反対が賛成を7,000票余り上回った(投票率50.38%・新図書館に賛成24,981票 / 反対32,352票)。
山下史守朗小牧市長:どこが、どう具体的に、問題なのかということについて、一度立ち止まってですね、えー検証を丁寧に市民の皆さんを交えてしていく必要があると……
ナレーション:市長は、計画を白紙にはしないが、見直す方針を明らかにした。
――佐賀県武雄市――
テロップ:『「ツタヤ図書館」賛否の声 カフェは必要? 本選びは?』
ナレーション:「ツタヤ図書館」の先駆けとなったのは、佐賀県の武雄市だ。公立図書館では初出店となる、スターバックスに、雑誌などを販売する書店や、DVDなどの有料レンタルコーナーも併設された。365日、年中無休で、閉館時間も午後9時と延長。さらに、宅配での貸し出しや返却も可能になった。武雄市民Aさん(女性):(以前は)行きづらかったですね。普通の図書館だと。お茶しにがてらとか、来れて、とても来やすいです。
武雄市民Bさん(女性):お店を開けてる間には動けないので、自分で借りに行けなかったんですね。予約はできる。うん、それが自分で行ける。ナレーション:来館者数は、以前の3倍を超え(約80万人 / 2011年度比3.13倍)、その85%が満足と答えている。しかし、市民からはこんな声も。
武雄市民Cさん(男性):(図書館は)基本的に騒がしいところじゃないと思うんですが。
武雄市民Dさん(女性):いつも人が多いんで、まぁ、いちばんは……駐車場が狭いのがちょっと。ナレーション:他にも問題がある。貸し出し手続きを自分で行うと、(Tポイントカードにて)ポイントが貯まるサービスが導入されたが、個人情報流出の懸念が指摘されている。さらに……。
川原敏昭(武雄市・歴史資料館を学習する市民の会):武雄の郷土資料を展示していたスペースなんですけれども、そこが、まるきっりなくなってしまったと。
井上一夫(武雄市・歴史資料館を学習する市民の会代表):東京とかアメリカ資本の、ビジネス空間に変えられてしまう……ったという点に関しては、むちゃくちゃ、悔しい思いをしているということですね。ナレーション:国が重要文化財に指定した、郷土資料の展示室は、有料レンタルコーナーに様変わりした。市民の会は、図書館の根幹となる書籍選びにも疑問を突き付け、市を相手に訴訟を起こした。(TSUTAYAが作成したリスト映像を表示し)これは、TSUTAYA側が作成した、購入書籍のリストだ。ディズニーランド関連が70冊以上も並び、遠く離れた街(埼玉県や千葉県)のグルメ本が、多く入っている。市は、今後もTSUTAYA側と連携し、更により良い図書館づくりに努めたいとしているが。
井上一夫:(図書館は)知的な拠点としての、やっぱり、あの、市民を育てる機能がないといけないと思うんですね。それが武雄の場合はまったく逆転してしまって、あの、集客の方が主になって、図書館がまったく消えてしまったような状況にあるのが問題だと思います。
――神奈川県海老名市――
テロップ:『「ツタヤ図書館」全国に拡大 書架には“風俗営業本”も……』
ナレーション:ツタヤ図書館の計画は、正式発表されてるものだけで、全国7箇所 [01] に上る。その1つが、海老名市立中央図書館。今月リニューアルオープンを果たした。館内に入ると、ツタヤ図書館おなじみの風景が広がっている。プラネタリウムだった4階部分は、キッズ専門のスペースとなり、オープンエアの庭も登場した。来館者Aさん(女性):なんか、自分のイメージしている図書館とはやっぱぜんぜん違ったので、なんかすごい新しい発見というか。
来館者Bさん(男性):気分転換できていいんじゃないかなと思いますけどね。ナレーション:通常の図書館とは異なり、書店のノウハウを取り入れた、独自の分類で本が並んでいる。例えば、ロシアの文豪ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は、「海外旅行・ロシア」のコーナーに分類されている。旧日本軍の雪山訓練を描いた小説、『八甲田山 死の彷徨』は、国内旅行のコーナーに分類されている。戸惑う利用者もいるようだが。
高橋聡(CCC所属 / 海老名市立中央図書館館長):えー個々のまぁ書籍の並べ方についてはですね、えと発見性を結構重要視してるとこがあってですね、ご利用者の方に、自分の目で見ていただいて、そこでこう想像を膨らませていただいて本を手に取っていただくということも重要視しています。
ナレーション:高橋館長は、武雄市図書館にも関わった。不適切な本が購入されていた件を、こう振り返る。
高橋聡:武雄市の時は……あの、ド素人でした、ぼくら。選書に関していうと、もっともっとやり切れたことがあるんじゃないかなぁという風に思っていまして……
ナレーション:しかし、ツタヤ図書館の2例目となった海老名市でも、こんな書籍が含まれていた。タイ・バンコクなどの風俗店を紹介する本が複数見つかり、市議などから「ふさわしくない」との指摘があった。TSUTAYA側は「他の図書館にも置いてあり、特に問題はないと判断」と、コメントしている。今後、ツタヤ図書館の勢いは、どこまで広がるのだろうか。
――スタジオ――
膳場:はいあの、民間委託することで利用客が大幅に増えたり、あと周辺施設も活性化するっていうメリットはありますけれども、今ご覧頂いたようにあの、郷土資料のコーナーがなくなるなど、地域の図書館に期待される本来の機能が損なわれてしまったら、これは本末転倒だなと思いますよね。
岸井成格(アンカー):まぁそこが大きな問題なんでしょうね、やっぱり時代に合わせてね、新しい文化が生まれるときはどうしても摩擦は生じるんですよね。でまた、民間のね書店に委託するっていうんだけどどうしてもマーケティングとか、あるいは経営効率を重視する、そういうところに偏りがちになるんですよね。多くの利用者に喜んでもらうと、同時に図書館の持つ地域性とかね、あるいは学術性とかね、そういうのしっかり維持してもらう。そういう努力は必要でしょうね。
尺は短かったのですが、かなり詰め込んだ感じの内容でした。とにもかくにも、CCC高橋氏のコメントがひどい。当時の武雄市長である樋渡氏が「彼らにはノウハウがありますから」と言っていましたが、それを完璧にちゃぶ台返しするという暴言です。武雄市図書館を踏み台にしてコケにした上での海老名市立中央図書館での館長就任という図式ですね。
海老名市立中央図書館に関しては、選書問題も吹き飛ぶような図書分類が大きな問題になっており、ネット上では大喜利に発展しているという体たらく [02] 。武雄市図書館時代にド素人だった方々は、何を海老名市立中央図書館にもたらしたのか。今後展開されてるであろう他地域における図書館はどうなるのか。
図書館が図書館として機能しているなら、指定管理者制度にもCCCが図書館運営に参入することに関しても理解は示せます。個人的にはTポイントカードは必要ありませんが、基本的に収入の見込めない図書館運営において、それをなんとかしたいという現実は理解しているつもりです。
でもしかし、さすがにこれはあかんやろ。CCCが入らないでも頑張ってる自治体はたくさんありますよ。
References[+]
↩01 | 佐賀県武雄市 / 神奈川県海老名市 / 愛知県小牧市 / 宮城県多賀城市 / 岡山県高梁市 / 山口県周南市 / 宮崎県延岡市 |
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↩02 | 『海老名市中央図書館の謎分類メモ #公設ツタヤ問題 #海老名分類 – Togetterまとめ』を参照してください。 |