松濤美術館で『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし(A期)』を鑑賞してきた

松濤美術館で『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし(A期)』を鑑賞してきた

美術関係にほとんど縁のない人生を送ってきた私が展覧会へ行くよシリーズです。今回は渋谷区松濤美術館で開催中の『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』へ行ってきた。

金曜日は午前中から某人と会う約束があり、それが早く終わったもので渋谷まで散歩して移動。お昼ご飯を食べるにしても時間があったものだから、30分ほど松濤美術館で時間を潰すことには決めていた。毎週金曜日は渋谷区民無料なので、気軽に行ける。

下調べなしで行くとちょっとした驚きもあって、「あ、浮世絵やってるんだ!」みたいな。浮世絵と言えば『美人画』や『○画』1 みたいなイメージがあるのだけど、今回の展覧会は少し趣が違う。

 浮世絵に描かれた女性というと、まず「美人画」を思い浮かべるのではないでしょうか。確かに、江戸時代、女性は鑑賞され、美しく描かれる対象でした。しかし、そうした彼女たちにも人生があり、生活がありました。現在と異なる身分制社会のなかで、公家・武家・農民・町民・商人・○女2 など、多様な階層の女性たちがそれぞれのそれぞれのくらしを営んでいました。
 この展覧会では、江戸時代に生きたそうした女性の「くらし」の様相を描かれたもの、記録されたものなどから探ります。

(中略)

 特に、浮世絵には、描かれた女性の年齢や身分のみならず、当時の流行や生活の仕方など、多くの情報が盛り込まれています。今回、江戸時代の女性のくらし全般を、様々な角度からご覧いただければ幸いです。

渋谷区松濤美術館 図録(2019)『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』,「ごあいさつ」,p3

受付で(渋谷区民であることを証明するために)免許証を提示すると、「地下1階を観てから2階へ行ってください」と案内された。展示は章立てになっていて、次のような流れで鑑賞することになる。

  • 序章―はじめに
  • 第1章 階層―身分とくらし
  • 第2章 芸事―たしなむ
  • 第3章 観られる女―愛でる
  • 第4章 着物―まとう
  • 第5章 化粧―よそおう
  • 第6章 娯楽―あそぶ
  • 第7章 労働―はたらく
  • 第8章 結婚・出産・子育て―家族をつくる
  • 第9章 教育―まなぶ
  • 第10章 色恋―たのしむ

鑑賞開始、序章でいきなりの『紫縮緬地鷹狩模様染縫振袖(むらさきちりめんじたかがりもようそめぬいふりそで)』の展示を観て固まった。武家女性が着用したではと思われる振り袖。立体感のある刺繍がすごくて見入ってしまい、「30分くらいで出よう」などと考えていた行動がいきなり崩れ去る。

流れに沿って解説を読みつつ進んでいくのだけど、感銘したのは江戸時代の文献がそのまま展示されているところだった。こういうのは鑑賞慣れしている人にとっては当たり前なのかしれないのだけど、うん、すごいね。

他、数ある展示物の中で私が見入ってしまったのは、『紫縮緬地桜鼓模様染縫帯(むらさきちりめんじさくらつづみもようそめぬいおび)』という刺繍が鮮やかな掛下帯(かけしたおび)、『鏡台』を含む化粧に関する道具の数々。かんざしの飾りになっている赤い玉が珊瑚であること。

『風流七ツ目絵合 巳と亥』の解説を読むと、自分の干支から数えて7番目の干支を絵にしておくと縁起が良いらしい。作品ではヘビのおもちゃを持った赤子を抱えた母親と、コマ絵にイノシシが描かれる。こういう縁起物に関しては今まで知らなかったので、「へぇ」の連発。

まじまじと見入ってしまったのは『女重宝記(おんなちょうほうき)』。

 わかりやすい文体に挿絵を交え婦女子の心がけるべき教養や嗜みを説く江戸期の女子教訓書、実用書。初版は元禄五年(一六九二)版とされ、以後、改訂され幕末まで刊行された。

渋谷区松濤美術館 図録(2019)『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』,「第8章 結婚・出産・子育て―家族をつくる」,p123

この書物にある、女性が身ごもった赤子の胎内での状況を示す挿絵に興味が湧いた。さらに引用。

上部には胎児生成の様子を図示する「胎内十月図」が描かれる。初月から四月目までは密教法具。五月目から人の形に変わる様子と対応し各月を守護する守り本尊が表される。宝具から人の形に変わる様は胎児成長の神秘性を表し、各月の守護仏を信仰することで健やかな子の誕生を約束されたという。

渋谷区松濤美術館 図録(2019)『女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし』,「第8章 結婚・出産・子育て―家族をつくる」,p123

解説を読んで「ああ! 妊娠の安定期に入るまでの赤ちゃんって『宝具』なのか!」と思ったら、なにかとてもすごいことのように思えてきたのが自身でも驚きであった。挿絵を観ながら「うわ、すげー」と小さな声が出た。

他にも興味のある作品が山のようにあったのだけど、もうとにかくは、気になった人は足を運ぶべきだと思った。タイトルにA期と書いたけど、今回の展示は期間中に展示入れ替えが2回行われるから。詳細日程は『[PDF] 「女・おんな・オンナ~浮世絵にみる女のくらし」展 作品リスト』をご覧ください。

最初は図録を購入するつもりなんてなかったのだけど、最後まで観て「これはちゃんと解説読みたい」などと盛り上がってしまったので、帰りに受付にて2,000円をお支払い。

ちょっとだけ観ていくつもりで、1時間以上居座ってしまった。とてもおもしろかったので、残りの展示も鑑賞しに行く予定。

  1. ○には『春』が入るのだけど、どうもこの単語が入るとGoogleはポリシー違反にするらしい。クソすぎる。 []
  2. ○には『遊』が入るのだけど、こちらも念のため伏せておいた。Googleクソすぎる。 []