Web 広告のこれまでと DNT に関する話

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商用サイトというのは主に広告から収入を得ることによって運営されているのだけど、世情は厳しくなるばかりで普通にバナーを表示してるだけでは単価が安過ぎて話にならなくなっているのが現状。無論無いよりはあったほうが良いので、何も表示しないということはあり得ないのだけど。

Web 広告というものが出始めた頃はテレビ CM と同じ感覚で、『表示回数がすべて(≒視聴率)』で料金は決まっていたように思う1 。ところが時は流れ、Web という媒体では具体的な顧客データを取得しやすいということがクライアント側に認知されてくると、表示回数以外のウリがないことには単価を上げることも難しくなってきて。

あまりにもざくっと書き過ぎた感はあるけれど、クライアント側に広告を出していただくように遡及するには、いろいろなオプションが必要になってきたということです。例えば Microsoft が IE の広告を出すと仮定したとして、古の時代であれば単純に「月間 20 万 PV 表示しますから○○万円いただきます」で済んだのだけど、IE 利用比率の高い日本国内でそれをやっても効果が薄いと。だから「IE 以外のブラウザで閲覧しているユーザに対して月間 20 万 PV 以上表示します」というようなことをしないといけなくなった……というような感じ。しかも、料金は古の時代よりも遥かに安く。

上記の例は初歩の初歩で今になってそれを書くのか的な雰囲気でアレだけど、要するにそういうことがいろいろあって、現在ではユーザの行動を追跡して何かしらの広告を出してみたり(トラッキング)2 、サイトへの登録情報を元にして広告を出してみたり(属性型)3 して広告の効果を上げて単価も上げましょうという流れになっているということです。当然のことながら他にもいろいろあるのだけど、それは割愛。

仕組みを知らないと(いや、むしろ知ると)気持ち悪く感じるのはトラッキングの方かな。なにせユーザの行動パターンで広告が表示されるかどうかが決定されるわけで、よくわからないまま「いつも同じ広告が出るけど、これっておれに買えと言ってるのだろうか……もしかして運命?」のような雰囲気を与えたり与えなかったり。ただまぁ、ユーザの興味があるかもと考えられる広告が表示されるわけで、それの是非については横に。問題となるのはユーザ情報の取得手法であったり、その情報の運用管理に関してであって広告そのものは悪くないのよ(でないとサイト維持できないしお給料出ないじゃないー)。

せっかくのユーザ情報は正しく運用管理して、ユーザにとって不利益が起きないようにしようというのは普通の企業であればどこでも考えてるだろうしそう思いたい。世にあるすべてがそうでないという事実があるのは知っているけれど、まともな企業であればサイトの存在そのものを揺るがすようなアフォなことはしない。

ただそういうことを踏まえても「それでもトラッキングは嫌だなー」という方々がいるのは確かだし、それも理解できる。そのようなユーザの意思を反映させようというのが DNT (Do Not Track) という思想であり仕様。Firefox に実装された DNT は初期状態が『意思表明をしていない(未選択)』であり、チェックを入れることで『トラッキングを拒否する』ことになる4

DNT の考え方に関して、Mozilla Japan では以下のように書いている。

Mozilla にはユーザの意思は分かりませんので、初期設定ではサーバに対して何もシグナルを送信しません。これによってシグナルの存在はより重要な意味を持ちます。送信されるシグナルは、Mozilla の選択ではなく、ユーザ自身の選択ということになるのです。このため Firefox は、ユーザが自ら意思を示すまで、シグナルの送信は行いません。

DNT は、画面の前に座っている人間と、その人が訪れようとするサイトの間の対話を可能にしました。DNT を初期設定で有効にしてしまったら、それは対話ではなくなります。DNT を効果的なものにするためには、ユーザ本人の声を表す必要があるのです。

Mozilla が DNT を導入した理由は、まさにここにあります。ユーザが声を出して、自分が追跡されたくないという意思をサイトに対して伝えられるようにすること、それが私たちの意図するところです。

Do Not Track – 重要なのはユーザ本人の意思を伝えること | Mozilla Japan ブログ

ユーザと対話しつつ適正だと思われる広告を表示させてもらう。そうしてサイトの売り上げとユーザの利益の双方を両立させる。トラッキングを否定してもらうことで、サイト側はそれを情報として利用できる(どのように扱うかは考えどころ)。

さて、Mozilla Japan のエントリでは、冒頭に DNT がデフォルトで有効になっているプレリリース版 IE 10 の話題に触れている。初期状態でトラッキングを拒否するということは、トラッキング手法そのものの否定になる。これが当たり前になってしまうと、広告配信手法としてのトラッキングは無意味になるだろうし、そうなると広告配信側は DNT そのものを無視するようになるだろう。結果的にこれは、ユーザに不利益をもたらすことになるのではないか。

根本的な問題として、そもそも広告掲載媒体側が DNT に対応するのかどうかという話はあるけれど5 、それはそれとして個人的には DNT という仕組みは悪くないとは思っている。だからここは Microsoft も仕様横並びで IE 10 をリリースして欲しいもんです。というか勝手なことするな。

ところで Firefox。一旦トラッキング拒否のチェックを行った後にチェックを外しても HTTP ヘッダに変化がないのはなぜだろう……と思って調べたら、NoScript を入れていると Firefox の環境設定無視して常に DNT は有効になるということがわかった6 。アドオンあれこれ入れているとデフォルトの設定がわからなくなるから、こういうとき困るな。

それにしても、ボクとおはなししましょうという Firefox かわいい。

  1. インプレッション保証型広告。 []
  2. デジカメのニュースばかり読んでいると、政治系ニュースのページを開いてもデジカメ関係の広告が表示されるとか。 []
  3. ユーザが登録した情報を元にするため、虚偽の登録をするとそれが反映される。例えば男性なのに女性と登録したために、コスメ関係の広告が出てくるであるとか。 []
  4. チェックを入れると HTTP ヘッダに “DNT: 1” が入る。 []
  5. 気が向いた時に某企業の担当者に聞いてみたりするが、はっきりした回答が得られない。 []
  6. about:confg から値修正はできるみたい []